ニュースや情報番組で「メタバース」という言葉を耳にする日が増えています。毎日のようにメタバースについての話題が取り上げられており、注目度が徐々に上がっていることがわかります。仮想空間?バーチャルの世界?となんとなく理解しているつもりでも、メタバースについて詳しく説明することは難しいという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、今注目のメタバースの特徴や注目を集めている理由、ビジネスにおける活用例などメタバースについての情報を紹介します。
目 次
メタバースとは
メタバースとは、インターネット上に作られた仮想空間のことです。「メタバース」という言葉は、アメリカのSF作家ニール・スティーヴンスンが発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」の中に登場しています。小説の中では、インターネット上の仮想世界のことを指しています。メタバースは、”超越”を意味する「Meta」と”世界”を意味する「Universe」を組み合わせた造語です。
アメリカの大手IT企業であるFacebookは、メタバースの開発を強化するために社名を「メタ」に変更しました。メタのCEOザッカーバーグは、「メタバースが次のフロンティアだ」と説明し、「前に進み続ける」と述べました。
メタバースはオンライン上の仮想空間であることから、ユーザーが単独で体験するものではなく複数のユーザーと同時に同じ空間を共有することができ、コミュニケーションを取ることも出来るという特徴があります。
メタバースが広く世界に知られることになったきっかけの一つに「セカンドライフ」をあげることができます。セカンドライフとは2000年代に発表されたもので、バーチャル空間において現実とは異なる日常を過ごすことができるサービスとして話題となりました。セカンドライフでは、米ドルに換金可能な独自の通貨が発行され、経済活動が行われたことも注目された理由の一つです。
日本国内では、自身のアバターがゲーム内の空間で生活する「あつまれ どうぶつの森」や「フォートナイト」などのゲームがメタバースの一種であるとも言われています。メタバースについて詳しく説明ができなくても、知らず知らずのうちに、既にメタバースに触れている方も多いと言えます。
メタバースと今までの仮想空間の違い
メタバースの登場以前にもゲームの世界などで仮想空間は存在していましたが、どのような違いがあるのでしょうか?
ゲームの世界においては、ユーザー同士がインターネットを介してオンラインゲームを行ったり、ゲームの中で武器や装備を売買するものは昔から存在していました。
ただ、従来型の仮想空間では二次元の世界でのビジネス活動は不可能でした。それに対してメタバースは、三次元の世界で音声チャットなどコミュニケーションを取ることができるため、リアル度が高くなっています。従来型の仮想空間と大きく異なる点は、経済活動が可能というところです。現実の世界同様の行動をすることができるため、まるでもう一つの世界が広がっているかのような体験をすることが可能となりました。
メタバースが注目されている理由とは
メタのCEOザッカーバーグなど世界中の企業のトップや投資家は、なぜメタバースに注目しているのでしょうか?メタバースが注目されている理由を紹介します。
通信技術の発達
メタバースが注目される理由として大きいのは、スマートフォンやパソコン、ゲーム機の普及率の高さです。今や1人で複数台所持も当たり前の時代となりました。また、5Gなどのモバイルの通信量の増加やインターネットの高速化など、通信技術は飛躍的に向上しており、それらの影響が非常に大きいです。
さらに、VR(仮想現実)AR(拡張現実)MR(複合現実)を体験できる技術の進化も、より現実的な体験には不可欠です。VRゴーグルも以前と比べると低価格で手軽に入手できるようになり、メタバースの普及のための材料が揃ったと言えます。
精度の高い映像を映し出すことが可能となったため、本当に仮想現実に飛び込んだと錯覚することさえできます。
コロナ禍による在宅時間の増加
新型コロナウイルスの流行により、私達の生活が一変しました。学校が休校になり、在宅勤務が推奨され、外出自粛などにより在宅時間が増加しました。公園から子供達の声が消えて、発売直後でもクリスマスでもないのに人気のゲーム機は品切れ状態が続いたのです。大人はオンラインでミーティングを行い、飲み会さえもオンラインになりました。オンラインに対する抵抗感がある人も利用せざるを得なくなったのです。
コロナ禍によって、デジタルコミュニケーションの場が増えたことは、メタバースにとって追い風となりました。
メタバースのメリット・デメリット
注目度が増すばかりのメタバースですが、我々にとってどのようなメリットがあるのか、また考えられるデメリットは何なのかをみていきましょう。
メタバースのメリット
非日常的体験が可能
メタバースのメリットとして最初に紹介したいのは、メタバースを通して非日常的な体験が可能である点です。
例えば、泳げない人が海に入ってイルカと一緒に泳ぐことができます。長期休暇を取って飛行機を乗り継いでカナダへ行かなくても、オーロラを見ることができます。VRゴーグルを装着するだけで、物理的な距離を感じることなくさまざまな体験をすることが可能なのです。
コロナ禍以前には当たり前だったライブイベントに、リアルに近い状態で参加することができるのも、メリットです。
新たなビジネスの場になる
メタバースには、実際に店舗を構えることができます。メタバースの中の店舗ではNFT作品の販売やオンラインイベントでの商品販売がすでに行われています。すでに一部ではアバターによる顧客との会話が可能になり、価格交渉も可能となることが期待されています。実際に人と接することが苦手な人もアバター同士であれば、抵抗なくコミュニケーションをはかることができる人もいるでしょう。
メタバース上の店舗では、光熱費や賃料などの固定費が不要です。メタバース導入時にコストがかかりますが、新たなビジネスが生まれることも期待されています。
離れている人とのコミュニケーションの場になる
物理的に離れた場所にいる人同士でも、メタバース上ではすぐに会うことができます。それぞれの居場所から仮想空間にアクセスするだけで、気軽に交流することが可能だからです。
メタバースのデメリット
セキュリティ面の不安
メタバースの世界でNFTアートの購入など買い物をすることができますが、そのためには仮想通貨が必要です。仮想通貨を使用するためには「ウォレット」と呼ばれる財布のようなものを作らなければなりません。仮想通貨は、未だセキュリティ面に不安があるため注意が必要です。
最近では、2022年3月にゲーム専用のブロックチェーンプラットフォームがハッカーに侵入されるという事件があり、被害総額は750億円にも及びました。
依存への不安
映像技術の向上によって、メタバースの世界では美しい映像やリアルな体験ができるという点はメリットでもありますが、依存の危険性が懸念されています。仮想世界に入り込んでしまい、メタバースから抜け出せなくなることや現実世界との境目がわからなくなる可能性もあります。現実では体験することのできない刺激的な空間は魅力的です。世間との関わりが希薄になりつつある現代では、子供だけでなく、大人も慎重に利用することが大切です。
費用がかかる
メタバース導入のためには、高額なVR機器やハイスペックなパソコンを購入しなければならないため費用がかかります。通信環境を整える必要もあり、ハードルが高いと感じる人もいるでしょう。
実際に利用する場合には、ゴーグルを装着したり仮想空間へのアクセスをしなければなりません。その作業を面倒だと思えば、それもデメリットと言えるでしょう。
メタバースでできることとは?
インターネット上にある仮想空間、メタバースには実際にどのようなことができるのでしょうか?メタバースでできる代表的なことを紹介します。
ゲーム
メタバースの世界で最もわかりやすいのは、ゲームです。オンラインゲームでは自分のアバターを作成して、ゲームの世界に入ることができます。
メタバース活用の最先端バトルロワイヤルゲームの「フォートナイト」は多くの若者からの支持を集めています。ゲームの参加者は、仮想空間にある無人島にスカイダイビングで落下するとゲーム開始です。ゲームの中で仲間とのコミュニケーションを取りながらゲームに参加することができます。
任天堂の「あつまれ どうぶつの森」も、人気のゲームです。こちらも仮想空間上の無人島で野菜を育てたり魚を釣ったり、DIYを行いながら生活をします。オンラインで、自分の島に友人を招くことも可能です。有名ブランドなどの参入や企業とのコラボ企画も多く見られて男女問わず大人から子供まで人気があるゲームです。
メタバースには、ARという現実世界にバーチャル映像を重ねることが可能です。現実世界にアニメやゲームのキャラクターが存在しているような体験をすることができます。 「ポケモンGO」というゲームをご存知の方も多いのではないでしょうか?「ポケモンGO」は、ARゲームの代表としてあげることができます。スマホのカメラを通して現実世界を見ると、ポケモンを探すことができます。ポケモンを捕まえたり、捕まえたポケモンを戦わせることもでき、日本だけでなく海外でも流行しました。無料でアプリをダウンロードすることができるため、スマホさえあればどなたでも簡単にARを体験することができます。
バーチャルライブ
仮想空間でバーチャルライブを行うアーティストが増加しています。新型コロナの影響で、大人数でのイベントの自粛が続いていました。そんな中、会場に出向いてライブに参加するのではなく、自宅にいながらライブを鑑賞できのがバーチャルライブです。
2020年に「フォートナイト」の中で、アメリカの歌手トラヴィス・スコットのバーチャルライブが開催されたことをご存知の方もいらっしゃるでしょう。トラヴィス・スコットの3Dアバターによってバーチャルライブが行われたのです。ライブの視聴とグッズの販売を合わせると、約21億円の売上があったと言われており、今後のバーチャルライブへの期待は高まるいっぽうです。
買い物
メタバースに百貨店の三越伊勢丹が伊勢丹新宿本店を再現しています。「REV WORLDS」というアプリを利用すると、自身のアバターでバーチャル伊勢丹新宿店に行くことができるのです。
買い物はもちろん、店員とのコミュニケーションを楽しむことが可能となっています。他の買い物客との友達申請をすることもできます。リアルに再現されている売り場もありますが、実際とは異なるデザインの場所もあり工夫されています。
バーチャル伊勢丹の売り場にある商品は、実際に販売しているものを3Dスキャンしているものもあります。バーチャル空間での買い物はできませんが、そこからECサイトに飛んで商品を購入することは可能です。
現在、他の店舗や企業の出店も受け入れることも検討されているということです。
アパレルブランドの「BEAMS」も、2021年12月に行われたバーチャルマーケットに店舗を出店しました。
今後もさらに、バーチャル空間へ出店するブランドや企業が増えることが期待されています。
メタバース事業に取り組んでいる企業
Facebookは社名をメタに変更し、メタバース事業に巨額の投資をすることを全世界に発表しました。その他にも、ソニーは、PlayStation5のVRシステムの発表を行い、メタバース市場に乗り出しています。マイクロソフトは、現在利用されている「Teams」というオンライン会議ツールを3D仮想空間でアバターを使った環境で利用することができるようになると発表しています。
今後も多くの企業がメタバース事業に乗り出すことが予測されています。
まとめ
インターネット上に作られた仮想空間「メタバース」を紹介しました。
スマートフォンやパソコン、ゲーム機の普及や通信技術の向上、コロナ禍による在宅時間の増加などによって、メタバースの注目度が高くなっています。VR機が高性能であることや画像の美しさ、現実逃避によって仮想空間に依存することが懸念されていますが、上手に利用すれば仮想空間を楽しむことができます。
メタバース事業に取り組んでいる企業も多いため、今後ますますメタバースの世界が身近になるでしょう。