INSIGHTS

ブロックチェーンとは?仕組み・具体例・企業での使い方を基礎から解説

共有台帳の例から、ブロック・ハッシュ・合意形成・スマートコントラクトを解説。データベースとの違い、RWAへの応用、導入前の確認事項まで初心者向けに整理します。

· IndieSquare · 更新

読む目安:約10分

01

ブロックチェーンとは?「共有する台帳」で考える

ブロックチェーンは、取引などの記録を一定のまとまりにしてつなぎ、複数のコンピューターで共有・検証する技術です。ここでいう取引には、送金だけでなく、権利の移転や状態の更新なども含まれます。

NISTは、ブロックチェーンを改ざんの検知と改ざんへの耐性を備えた分散型のデジタル台帳として説明しています。初心者の方は、まず「関係者が共通のルールで履歴を確かめられる台帳」と捉えてください。

ビットコインはこの技術を利用する一例です。ブロックチェーンという技術と、その上で扱う暗号資産、サービス、事業は区別します。技術を導入したからといって、必ず暗号資産の売買を始めるわけではありません。

参考:NIST: Blockchain Technology Overview

02

身近な例:3社で設備の記録を共有するとしたら

設備の所有会社、利用会社、管理会社が、それぞれ表計算で同じ設備を管理しているとします。利用開始日や契約の変更があるたびにファイルを送り、互いの記録が一致しているかを確認する必要があります。

共有する台帳を用意し、「誰が変更を申請したか」「必要な承認を得たか」「どの順番で確定したか」を同じルールで扱うと、履歴を確認しやすくなります。ブロックチェーンは、その台帳の構成方法の一つです。

ただし、この例なら共同のデータベースでも解決できるかもしれません。複数の組織が別々に記録を検証する必要があるか、誰が管理者を担えるかを考えてから、仕組みを選びます。以降の例も技術を理解するための仮定です。

03

記録されるまでの流れ:申請・検証・合意・共有

例えば、A社からB社へトークンを移転する操作を考えます。利用者の画面ではボタン一つでも、裏側では複数の処理が行われます。下の流れは概念的な説明で、順番や役割はネットワークごとに異なります。

「送信できた」という表示と、「業務上、確定したものとして扱える」という状態は同じではありません。画面に処理中・確認済みなどの状態を分けて表示すると、二重操作や早すぎる後続処理を防ぎやすくなります。

ノードは、このネットワークに参加してデータのやり取りや検証などを行うコンピューターです。ノードの種類によって、保存する情報や担当する処理は異なります。

図解

操作の申請から、共有される記録へ

  1. 申請

    宛先と数量を指定し、署名して送る。

  2. 検証

    署名・残高・権限などを確認する。

  3. 合意

    有効な記録と、その順番を決める。

  4. 共有

    参加ノードが履歴を反映する。

電子署名は申請者の権限確認などに使われます。送信済みと確定済みは別の状態で、検証・合意の手順や確定の扱いはネットワークによって異なります。
  • 申請する:送信先や数量などの内容を作り、必要な電子署名を付けて送ります。
  • 検証する:形式、署名、残高、操作の権限などを、ネットワークのルールに照らして確認します。
  • 合意する:どの有効な記録を、どの順番で採用するかを、定められた方式で決めます。
  • 共有する:承認された履歴を参加ノードが反映し、アプリが結果を読み取ります。
04

ブロック・ハッシュ・合意形成をやさしく理解する

ブロックは、複数の記録などをまとめた単位です。ハッシュは、データから計算する一定の長さの値で、「内容の指紋」のようなものです。元のデータが変わると通常は値も変わるため、同じ内容かを確認する手掛かりになります。ハッシュ化は、暗号化や内容の正しさの保証とは異なります。

ブロック同士は、前のブロックに関係するハッシュなどを使ってつながります。過去を書き換えると、そのつながりとの不整合が生じます。ただし、ハッシュだけで書き換えを防ぐのではなく、検証と合意形成、参加者の構成を合わせて履歴を守ります。

合意形成は、参加者が採用する履歴をそろえるルールです。計算作業を使うPoW、預け入れた資産などを基に検証者を選ぶPoS、あらかじめ認めた参加者で承認する方式などがあります。確定性、処理能力、運用条件は一律ではありません。

図解

前のブロックのハッシュで、記録をつなぐ

  1. ブロック1

    取引などの記録

    前のブロックのハッシュ
    このブロックのハッシュ
    A1
  2. ブロック2

    次の取引などの記録

    前のブロックのハッシュ
    A1
    このブロックのハッシュ
    B2
  3. ブロック3

    さらに次の記録

    前のブロックのハッシュ
    B2
    このブロックのハッシュ
    C3
A1・B2・C3は説明用に短くした値です。各ブロックは前のブロックを参照します。過去の変更による不整合を検出できる仕組みと、検証・合意形成を組み合わせて履歴を守ります。

参考:ethereum.org: Technical intro to Ethereum

05

普通のデータベースとの違い

比較のポイントは、どちらが新しいかではなく、誰を信頼して記録を管理するかです。通常のデータベースも複製、監査ログ、細かなアクセス制御を備えられます。「共有できるのはブロックチェーンだけ」という理解は適切ではありません。

自社だけで管理する顧客情報や頻繁に修正する業務データでは、一般的なデータベースが扱いやすい場面があります。複数の組織が共通のルールで履歴を検証したい場合に、追加の選択肢としてブロックチェーンを検討します。

普通のデータベースとの違い
比較する点一般的なデータベースブロックチェーン
管理の主体管理者が権限と更新ルールを運用するネットワークの検証・合意ルールを使う
記録の修正権限に応じた更新・削除を設計しやすい過去の履歴を直接書き換えず、訂正を追記する設計が中心
共有と検証API(システム間の接続口)や複製、ログで共有する複数のノードがルールに従って履歴を検証する
費用と性能構成や処理量に応じて調整する合意形成、ネットワーク手数料、ノード運用なども考慮する
採用判断管理主体を置ける業務に適することが多い複数主体による検証に価値があるかを確認する
06

パブリック型と許可型は何が違うのか

パブリック型は、広く参加できるネットワークを指すことが多い言葉です。許可型は、検証や運営に参加できる組織をあらかじめ制限する構成です。複数社で運営するものはコンソーシアム型と呼ばれることもあります。

ただし、「誰でも読めるか」「誰が書き込めるか」「誰が承認するか」は別々の設計項目です。許可型でも、契約情報を全参加者へ開示してよいとは限りません。公開型でも、個別のトークンの移転条件を設定する場合があります。

企業の検討では名称だけで選ばず、参加者の追加・退出、管理権限、障害対応、費用負担、仕様変更への同意方法まで整理します。運営主体が一社なら、その会社への依存がどこに残るかも把握します。

07

トークン・ウォレット・秘密鍵の関係

トークンは、残高や保有者などを記録するデジタルな単位です。ウォレットは、アドレスや鍵を扱い、保有状況を確認したり操作を送信したりするためのソフトウェアなどを指します。名前は財布でも、物理的な硬貨を中に保存しているわけではありません。

秘密鍵は、操作の承認に使う重要な情報です。電子署名により、その鍵によって承認された操作かを検証できます。ただし、署名だけで相手の会社名や担当者の権限まで分かるとは限りません。企業では本人確認や権限管理との対応が必要です。

鍵を誰が保管するか、担当者が退職した場合にどう引き継ぐか、承認を複数人に分けるかを決めます。利用者が直接鍵を扱わない方式でも、管理する事業者と責任の所在を確認します。

08

スマートコントラクトで自動化できること

スマートコントラクトは、ブロックチェーン上の状態を一定のルールで更新するプログラムです。「条件を満たす申請だけ受け付ける」「保有口数に応じて数量を計算する」などの処理を表せます。名前にコントラクトとあっても、それだけで法的な契約書になるわけではありません。

説明用に、月次の分配額と保有口数が確定した後、対象者ごとの配分を計算する仕組みを考えます。入力が同じなら、参加者は同じルールに基づく結果を確認できます。一方、請求内容の妥当性を判断したり、契約の曖昧な文章を解釈したりする仕事は、別に残ります。

自動化は誤りも繰り返すため、仕様レビューと試験が欠かせません。誤入力や不具合の際に止められる範囲、修正の承認者、再処理の方法を設計します。銀行口座への実際の支払には、口座を扱う別の仕組みとの連携が必要な場合があります。

参考:ethereum.org: Smart contract security

09

入力した情報が正しいとは限らない:オラクルの役割

ブロックチェーンの記録が後から変わっていないことと、記録した出来事が本当に起きたことは別です。「設備が10時間動いた」と誤って登録すれば、誤った内容が記録に残り得ます。

オラクルは、外部の情報をブロックチェーン上の処理へ渡すための仕組みです。価格、入金、稼働情報などを接続できますが、外部情報の正確さを魔法のように保証するものではありません。

設備の例なら、センサーの値、運営会社が確認した稼働時間、請求対象の時間を区別します。どれを分配計算に使うのか、誰が承認したか、訂正時に何を残すかが重要です。情報を渡す技術と、情報を確認する業務を一緒に考えます。

図解

現場のデータを、確認してから記録へつなぐ

  1. 現場・業務システム現場のデータ

    センサーの稼働時間や、入金情報。

  2. 確認の責任者業務で確認

    契約や請求と照合し、採用する値を決める。

  3. データの接続オラクル

    確認した外部情報を、処理へ渡す。

  4. ブロックチェーン記録・計算

    受け取った情報を、定めたルールで扱う。

設備の稼働情報を扱う一例です。オラクルは外部情報を渡す仕組みであり、その情報が正しいことを自動で保証するわけではありません。

参考:ethereum.org: Oracles

10

RWAとフィジカルAIでは、どの記録を扱うのか

RWAでは、トークンが表す権利、保有者の変更、分配の基準や結果などを扱います。フィジカルAI設備では、ロボットの稼働実績と契約・請求を対応させる必要が出てきます。両者をつなぐ場合にも、すべてのデータをチェーン上へ置く必要はありません。

例えば動画や細かなセンサー値は現場のシステムへ保管し、設備ID、確認済みの集計結果、証跡の参照先を共有する設計が考えられます。個人情報や機密契約の本文は、公開範囲と保管期間を別途検討します。

データのハッシュを記録する場合も、元データが失われると内容を再確認できません。原本の保管者、保存形式、アクセス権、バックアップが必要です。ブロックチェーンはロボットの制御や安全装置を置き換えるものでもありません。

RWAとフィジカルAIでは、どの記録を扱うのか
情報主に検討する保管先共有する場合の論点
契約書・顧客情報アクセスを制限した業務システム必要な参照情報と承認状況
動画・センサーの生データ現場の設備・データ基盤識別ID、集計値、確認の証跡
権利の保有・移転選定した台帳やブロックチェーン本人・権限、変更の順序、移転条件
請求・銀行入金会計・決済システム照合済みか、誰が確認したか
分配結果運用システムと共有記録計算条件、実行状態、訂正との対応
11

導入費用と運用で見落としやすいこと

費用は、プログラム開発だけではありません。既存システムとの接続、権限設定、ノードやサービスの利用、監視、鍵管理、問い合わせ対応が必要です。ネットワークによっては取引ごとの手数料も生じます。

利用者がガス代(ネットワーク上の処理にかかる手数料)を直接払わない設計でも、サービスの運営費用がゼロになるわけではありません。利用量が増えたときの費用と、負担する組織を確認します。誰がソフトウェアを更新し、どの時間帯に止められるかも業務条件です。

検証では平均の処理時間だけでなく、混雑時の遅延、失敗後の再送、同じ処理の二重登録、外部システム停止を扱います。技術が動くことに加え、現場の人が誤解なく運用できるかを評価します。

12

よくある質問

誤解しやすい言い方を、実際の設計で使える理解へ置き換えます。

ブロックチェーンなら絶対に改ざんされませんか?

絶対ではありません。履歴の変更に対する耐性は、合意方式、参加者、鍵や運営権限などに依存します。アプリの不具合や誤入力までなくなるわけでもありません。

すべての情報が世界中に公開されますか?

構成次第です。閲覧、書き込み、承認の権限と、チェーン外へ置く情報を分けて設計します。公開ネットワークで機密情報を扱う場合は、特に公開範囲を慎重に検討します。

間違った記録はどう直しますか?

履歴を直接消すのではなく、訂正や取消を新たな記録として残す設計が一般的です。元の記録と訂正を対応させ、アプリが現在の正しい状態を表示できるようにします。

ブロックチェーンはすべて大量の電力を使いますか?

消費電力は合意方式や構成によって異なります。計算競争を使う方式も、認められた検証者が処理する方式もあります。特定のネットワークの特徴をすべてに当てはめないことが大切です。

社内のデータベースを全部置き換えるべきですか?

通常は業務ごとに判断します。まず、複数組織による共有・検証が必要な部分を特定し、既存システムとの役割分担を検討します。

13

企業で検討を始めるためのチェックリスト

最初の資料は、技術名の一覧よりも「誰と、何を、なぜ共有するか」を書いた1枚が役立ちます。現在の作業と困りごとを先に整理すると、ブロックチェーンが必要かどうかも判断しやすくなります。

IndieSquareでは、RWAの発行・分配・運用記録と既存業務との接続を検討します。hazBaseやHAZAMAのページでは、その事業基盤と技術・特許情報を紹介しています。案件ごとに要件を確認し、構成と提供範囲を定めます。

  • 共有する情報と、社内に残す情報を分ける。
  • 更新を申請する人、承認する人、確認する人を決める。
  • 通常のデータベースやAPI連携で解決できるか比較する。
  • 訂正、権限変更、鍵の紛失、停止・再開の手順を考える。
  • 少数のデータで、照合時間、処理失敗、担当者の作業を測る。
CONTACT

PoCの要件整理から、ご相談ください。

対象資産、現在の業務、利用中のシステムをお聞かせください。
必要な資料・検証範囲・評価基準を整理し、計画を具体化します。